御 挨 拶
2024年5月17日
常念診療所 所長 花岡正幸
常念診療所の所長を務めております信州大学医学部附属病院長の花岡と申します。
常念岳(標高2,857m)は、北アルプス南部の一角を占める、いわゆる常念山脈の主峰です。常念山脈は、槍・穂高連峰とほぼ並行して南北に走り、餓鬼岳から燕岳、大天井岳、そして常念岳を経て、蝶ヶ岳、霞沢岳と続きます。信州大学医学部は長野県松本市に位置しますが、松本平から西方に眺める常念山脈の中で、ひときわ目を引くのが常念岳です。深田久弥の「日本百名山」の中に、「松本付近から仰ぐすべての峰の中で、常念岳の優雅な三角形ほど、見る者に印象を与えるものはない」というウェストンの言葉が引用されています。この言葉通り、松本平の人々は四季折々の常念岳を眺め、親しんできました。
常念診療所は1986年に信州大学医学部によって開設されました。常念小屋のご厚意で、冬季小屋を診療所として使用させていただいております。開所期間は7月の海の日から8月のお盆まで、夏季の約1か月です。診療所に詰める医師、看護師は全国から公募し、ボランティアとして自由診療を行っています。医療費は健康保険の効かない自費になりますが、諸経費を考えると採算は摂れません。やや割高に感じると思いますが、どうかご容赦ください。また、ボランティアの医師、看護師は山を愛し、登山者の味方になれる方であればどなたでも結構です。ご応募、お待ちしています。
診療所の運営は信州大学医学部山岳部の学生が行っています。ボランティアの人事、医薬品・生活用品の調達/管理、広報、開所/閉所作業、診療の案内/補助など、すべて学生が担っています。開所期間中は、連日数名の学生が診療所に詰め、様々なお手伝いをします。
約1か月間の開所期間中、100名前後の患者さんが来院します。時間帯のピークは16時前後で、時期としては8月の上~中旬に増加します。年齢は50~70歳が多く、男女差はほとんどありません。過去5年間の疾患の内訳は、多い順に、擦過/切傷、高山病、捻挫、関節痛、虫刺症、感冒となっています。一方、毎年2~3例の重症例があり、自力での下山が困難な場合はヘリコプターを要請します。
さて、新型コロナウィルス感染症の影響により、2020年は開設以降初めて開所を見送り、2021年以降は土・日・祝日、そしてお盆期間に限定した開所となりました。本年は、コロナ前に戻す方向で、8月を中心に約1か月の開所を予定しております。常念診療所は、信州大学医学部、附属病院、医学部山岳部、山岳部OB等関係者が協力し、皆様が安心して登山できるよう、安心かつ安全な運営に努めて参ります。どうぞよろしくお願いいたします。
プロフィール
【現職】
信州大学医学部附属病院 病院長
信州大学学術研究院医学系医学部内科学第一教室 教授
信州大学医学部附属病院呼吸器センター センター長
信州大学医学部附属病院呼吸器・感染症・アレルギー内科 科長
【社会における活動等】
日本登山医学会 監事
日本呼吸器学会 理事 指導医・専門医
日本内科学会 理事 指導医・専門医
日本アレルギー学会 代議員 専門医
日本登山医学会「高山病と関連疾患の診療ガイドライン」作成委員長
第4回アジア・太平洋登山医学会/第37回日本登山医学会合同学術集会 会長